子どもの歯並びを心配されて来院される方は多数おられます。その年齢は3歳や6歳の子もいれば、小学校高学年の11歳だったりとまちまちです。
しかし11歳以上のお子さんには多くの場合、歯列育形成を適用することができません。
歯の生えかわりや顎の成長を利用できないためで、この場合は一般矯正になります。
一般矯正では上下左右の第一小臼歯を1本づつ、計4本抜くことがあります。
(歯並びの状態によります)
もちろん当院での一般矯正が可能です。
歯列育形成は乳歯列期の3歳くらいから始めることが理想とされており、治療開始は7歳くらいまで、遅くても8歳くらいまでです。
プレートという矯正装置を使えることが大前提となります。
また治療開始が遅いとⅡ期治療(一般矯正)が必要になることがあります。
乳歯の裏側から永久歯が生えてきた7歳の子で乳中切歯(A)と中切歯(1)の交換異常です。
近年の軟食の影響かアゴがちいさい子に多い状態で、乳歯と永久歯の交換がスムースにいかないとこのような事が起こります。
子どもの矯正治療をしていない歯科医院では、
「治療を始めるにはまだ早いので様子を見ましょう。」と言われる可能性もあります。
しかしこの場合、乳中切歯(A)と中切歯(1)のスムースな交換はもはや期待できませんので、歯列育形成では治療が必要と判断します。
次の症例も永久歯が裏側から生えてきたケースです。
下の前歯2本(側切歯)が本来生える部分のスペースが足りなくて裏側から生えてきてしまっています。
歯列育形成は成長過程にある歯の土台(歯槽基底)にも良い影響を及ぼします。
プレート(矯正装置)を使って無理のない力で顎骨体部まで作用させて歯並びをきれいにしていきます。
永久歯の生えるスペースが足らない場合も歯と歯が重なって生えてしまいます。
しかし永久歯の生えるスペースがあるかどうかは、乳歯列の時にはなかなかわかりにくいものです。
そのため、乳歯列期はきれいな歯並びよりも乳歯と乳歯の間が開いている方が良い状態であるということを目安に子どもの歯並びを見てあげてください。
スペースの問題は乳歯より大きな永久歯が生えることを考えると理解しやすいと思います。
写真は反対咬合を改善した乳歯列期の子どもの症例ですが、歯列育形成による経過観察できれいな歯並びにできることが予測できます。
上下の歯の咬み合わせが反対の反対咬合は、下アゴが極端に前方に出た状態で横顔がしゃくれて見えることもあります。
上顎前突や受け口とも言い、見た目が不自然で、食べ物を噛むことが難しく、また発音障害や将来的には顎関節症の心配もあります。
反対咬合は乳歯列期(3歳~)、遅くても混合歯列初期(7歳までに)に治療することをお勧めします。遅くなると骨格性反対咬合(下顎が大きくなる)となり、一般的な成人矯正でも治せなくなってしまいます。
下の症例は乳歯列期の反対咬合です。子どもの反対咬合は取り外し式のムーシールド(歯列矯正用咬合誘導装置)などの使用で比較的簡単に改善することができます。
しかし反対咬合の原因は骨格性の問題や悪習癖、遺伝的要素など様々です。
まだまだアゴの成長のある子どもですから後戻りも心配です。
また反対咬合だけでなく他に歯並びの問題を抱えていることが多いので、基本的には歯列育形成による経過観察が改善後も必要になります。
日本矯正歯科学会の発表では、乳歯列の反対咬合が永久歯がはえてきて自然に治ったのは6%、永久歯に生え変わっても反対咬合だったのは94%だそうです。
つまり反対咬合が自然に治る可能性はかなり低いということです。また、両親に反対咬合がある遺伝的なものは自然には治りません。
お子様の反対咬合はお早めにご相談ください。